新着情報

新着情報

2016.01.01お知らせ
2016年 福岡女子大学 理事長?学長からの年頭の挨拶
 福岡女子大学の教職員?学生の皆さん、めでたく新春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。2015年4月に開始した第2期梶山体制の理事長?学長として、福岡女子大学の将来構想を述べさせていただきます。発展途上の福岡女子大学の教育と研究の進化、地域連携及び国際活動に対して、「新しい理念と活動目標」に基づく「将来構想」を教職員と学生の皆さんに提示することが、第2期目の理事長?学長の責務であると考えます。また2015年は、3月に国際文理学部の第1期卒業生が社会に飛び立つと共に、4月より新大学院修士課程がスタートした記念すべき年でした。この年を起点として、2023年の100周年とその後の未来に向けて、将来ビジョン「Shaping the Future‐Our Centennial & Beyond‐(100周年とその後の未来に向けて)」を学内外に公表し、本学の理念?ミッション?ビジョンと社会的使命をより高いレベルで実現することを目指しています。
 大学を取り巻く環境変化はますます加速し、社会からの大学に対する要請はさらに強くなっています。グローバル化と知識中心社会が進展し、「誰もが学び続ける」ことが必要なのは言うまでもありません。人口減少下で持続的に社会が成長するためには「全員参加型社会」を築く必要があります。大学は若者中心の学びの場から全世代のための学びの場へと役割は広がっています。特に福岡女子大学に対しては、地域の文化や産業の担い手を育てるなど、地域の大学としての期待が高まってきます。
 
 福岡女子大学の2016年度の重点項目について解説させていただきます。これらの実行に関して教職員の皆さんには、今まで以上の努力と支援をお願いします。

1.Shaping the Future‐Our Centennial & Beyond‐(100周年とその後の未来に向けて)将来ビジョンの共有
2.2016年度に受ける認証評価への対応
3.大学院前期(修士)課程の完成と後期(博士)課程のスタートと充実
4.国際化教育と体験学習の充実
5.外部からの受託事業の獲得と社会的知名度の拡大?向上
6.柔軟な大学運営の実現
 
1Shaping the FutureOur Centennial & Beyond‐(100周年とその後の未来に向けて)将来ビジョンの共有
 2015年には、国際文理学部の第1期卒業生が社会へ巣立っていき、新大学院がスタートしました。2023年の福岡女子大学の100周年とその後の未来に向けて、将来ビジョン「Shaping the Future‐Our Centennial & Beyond‐(100周年とその後の未来に向けて)」を学内外に公表しました。福岡女子大学は、建学の精神、教育の理念、大学のビジョンとミッションに基づき、社会における使命をより高いレベルで実現することを目指します。また、この将来ビジョンは、次期中期目標計画(2018-2023年度)の骨子にもなります。福岡女子大学の「将来ビジョンのキーコンセプト」として、次の3つを挙げます。
1)教育と研究の統合(Integration of Research and Education)
2)文理統合の深化(Integration of Humanities and Sciences)
3)グローバルとローカルの統合(Integration of Global & Local Perspectives)
「教育と研究の統合」は高等教育の最重要課題であり、研究のコンテンツを伝授する教育だけでなく、研究のプロセスに触発されて探究的な学習に臨み、デザイン教育を進化させ、自ら教育?研究を遂行する学習へと導くことで、真のアクティブラーナーの育成を目指します。また、これまでに取り組んできた「文理統合」の精神を、さらに大学院教育?研究まで進化?発展させると同時に、「グローバルな視点とローカルな視点」をつなげて新しい国際教育を実行します。
 100周年事業としての4つの「将来ビジョンの主要戦略」を設定します。
1)新しいリーダーシップを探求するグローバルな教育研究の拠点形成のため、「女性とリーダーシップ育成のためのセンター(Center for Women and Leadership)」の設立。
2)健康社会づくりをめざした地域の課題解決推進として、「国際フードスタディセンター(Center for Food Systems & Culture)」の設立。
3)文理統合型の教育?研究の推進のために、文理統合型コースや副専攻の展開?進展並びに博士後期課程の設置と充実。
4)柔軟な大学運営の実現のために、教育組織と研究組織との分離と職員の専門性強化。
上記1)~4)を基に、大学の将来計画の実行に取り組んで行きます。
 
22016年度に受ける認証評価への対応
 大学評価?学位授与機構による認証評価を受けるために、受けるべき、評価項目がどの程度学内で議論され、認証評価を受けるための準備がどのくらいできているか、大学として把握しておくことは重要です。私が2015年度の年頭の挨拶で掲げたように、認証評価を受けるために、福岡女子大学として議論を深め、準備すべき16項目のうち、未だ整備が十分にできていない事項がいくつかあります。特に、「サービスラーニングの実施」「アクティブラーニングの実行」「広報?シラバスの英語化」「UP(大学ポートレート)の拡充とIR(Institutional Research)の機能充実と把握?分析」「授業バーコード制の実施」等、福岡女子大学として深く集中的に議論し、教育?研究環境を整備して万全の態勢で今年の認証評価を受けるべきです。大学教育に対する質の保証と教育?研究環境の整備が、学生に対する最も重要な大学としての責務であることを教職員は深く認識し、認証評価への準備をしてほしいと思います。教育の質の保証は、大学院教育にも直接関係することであり、福岡女子大学の今後の社会的認知と評価の向上に避けて通れない関門です。
 
3.大学院前期(修士)課程の完成と後期(博士)課程のスタートと充実
 「次代の女性リーダーを育成」という建学の精神に則り、従来の細分化された専門分野を積み上げた研究者養成ではなく、高い専門性はもとより、創造的?革新的な構想力と実践力とを兼ね備えたグローバルなリーダーを育成することが、福岡女子大学の社会への責務です。専門分野の枠を超えた俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーの養成に向けて、博士後期課程では分野横断的な課題設定型コースを新設し、最終的には「文理統合科学専攻」の設置を目指したいと考えています。福岡女子大学が求める博士課程の専攻をどのような構成にするかは、教育の現場の意見も聴きながら将来構想の中で進化?実現していくつもりです。学部の名称を「国際文理学部」にしたわけですから、大学院課程も文理統合教育?研究の場であるべきです。
 
4.国際化教育と体験学習の充実
 福岡女子大学に於ける国際化教育は、学部入学時から徹底的に行われています。入学から短期間で集中的に受ける学術英語プログラム(AEP)の授業は、将来は、ファーストイヤー?ゼミ(FYS)と融合した英語によるデザイン教育として完成を目指すべきです。海外留学に関しても、二段階留学システムを進めたいと考えています。二段階留学の第一段階目は「気づき留学」であり、国際的感性とは何か、世界のダイバーシティとは何か等に、広い国際的視野を持って外国生活を体験することは、将来国際的リーダーとして活躍するための入り口教育として不可欠な過程となります。全寮制である国際学友寮「なでしこ」での日常生活や留学生との直接対話、English Villageでの留学生と日本人学生の共同作業の体験は、国際化教育に欠かせないプログラムです。若い学生に、国際化とは何か、ダイバーシティとは何か、さらに、人間性や倫理観も含めた感性や精神文化を体にしみこませて教えることは、教室内外での最も実効性のある教育体験であると考えます。
 体験学習は、学生が自ら体験し学ぶことを設計?実行するデザイン教育の典型的な一つの形態です。実体験を交えて学ぶことで思考力や判断力等が基本的な知識?技能として自分の内側に蓄積され、行動に対する自信と的確な判断を可能にします。日常とは違うフィールドに立つことで様々な課題に直面し、「何故」という問題意識を直接自らの体験学習の結果?成果として蓄積し、それを自らの能力として発揮することで、教室内の授業とは全く異なった視点に立って与えられた課題の解決を図ることができます。体験学習は、教室内の授業と共に、最も重要な大学での学習形式の一つで、福岡女子大学では、内容の充実と学習のカバーする領域を徐々に拡大しています。昨年の体験学習の中心コンセプトであった「弱者支援」と「大学運営に学生が直接参加」の学習は、2016年度も続け、単位化も計る予定です。
 
5.外部からの受託事業の獲得と社会的知名度の拡大?向上
 大学が現在、社会から何を求められているか、教職員の皆さんは知っていますか? 教育?研究の進化や人材育成は、大学として当然であります。福岡女子大学では、2015年より「さらに+αの大学になるためには」を目標に、大学が従来行ってきた目標?計画、行動?規範、教育?研究に基づく人材育成、社会?地域連携、国際活動に対して、さらに「+α」を教職員に求め、努力と実行を皆さんにお願いしています。換言すると、今より、より良い状態へ進化した大学作りが教職員全員に求められているのです。「+α」という考え方は、大学組織に対してのみではなく、教職員及び学生自身に自覚してもらうための意識の改善や努力目標です。現在の課題を一つ一つ解決していくことで、福岡女子大学が全国的に評価された優れた大学へ近づいていくでしょう。
 福岡女子大学は、2013(平成25)年度以降、毎年、文部科学省を中心とした組織より委託事業に採択されています。(1)「女性研究者研究活動支援事業」(2013~2015年度)、(2)「イノベーション創造力を持った女性リーダー育成プログラムの構築と普及」(2014~2016年度)、(3)「大学教育再生加速プログラム」(2015~2019年度)にそれぞれ採択され、大学の活性化や地域の活性化に著しい貢献をしています。(1)により、毎年女性教職員2名が外国で2-3ヶ月の海外研修を体験し、外国生活を直接肌で感じてもらうことにより、将来の福岡女子大学の国際化事業に積極的に参加してもらいます。(2)は、女性の大活躍推進福岡県会議とタイアップして女性管理職?トップ層の育成であり、大学が新しい社会的使命の実現に努力すべき展開が始まっています。
 学生に対しては、体験学習の一環として、2015年度は大学運営?経営に直接参加するプログラムを構築しました。従来教職員のみで行われていた大学の各種委員会に学生が直接参加することにより、大学組織の現状と課題を直に把握?理解し、社会生活で活きた体験をして大学を卒業して欲しいと願っています。現在は、大学の各種委員会のうち100周年記念事業や地域連携センター委員会等で活躍しています。
 さらに、2015年度より地域?社会連携の一環として、福岡女子大学は、住民も企画?参加する「生涯学習カレッジ」を始めました。「生涯学習カレッジ」では、学習の中に「遊び心」を取り入れており、2015年度は「日常の美術」と「食?文化」を学習の柱としています。地域の方々が「自らの背丈に合った感性」を身につけるプロセスの中で、「学びとは何か」という楽しみを見出しています。
 以上のような2015年度までの実績に踏まえて、今年度は更なる高みにある「+α」の大学構築を目指します。
 
6.柔軟な大学運営の実現
 教員?事務職員の方々に大学運営?経営に深く認識を持っていただくために、今後の大学の教育環境の改善と活性化のためのプロセスを説明します。教職員の方々は、自分自身の直接の問題として捉えて欲しいと思います。
 
1)教員組織の改革
 文理統合型の教育?研究の推進を容易にするために、将来、大学の組織を教員が所属する教育組織と研究組織とに分離します。これにより、教員が所属する研究組織には学科の壁が低くなり、テーマに応じて各種のリサーチコア等、横断的な連携のグループ組織を立ち上げることが容易となります。また、学部?大学院教育には従来の学科の枠を超えた多様な教員の参加により、福岡女子大学独自の文理統合型教育が可能になります。
 この改革を実行するために、2016年度以降の定年退職者の後任人事を含む採用人事については、「100周年とその後の未来に向けて」にある構想と戦略の実現を念頭において、人事委員会で精査します。その後、これまでの人事の手順を参考にし、大学の役員会の議を経て理事長組織で決定します。
2)事務職員の専門能力育成
 「100周年とその後の未来に向けて」のビジョンで提案されている新しいセンター構築や、教育組織と研究組織の分離など、新しい組織の目的を達成するには、教員が創造的発想と活動に集中することが出来るように支援する専門能力の高い事務職員の養成が不可欠です。そのため、海外研修を含めた能力開発のための計画的な人材育成システムを構築します。また、プロパー職員のキャリア開発と成長を支援する仕組みを導入していきます。
 
3)新しい教育制度の導入
 文理統合教育の拡充に加えて、学生に対する教育効果の向上と国際化への対応及び教員が学会での発表や社会貢献に集中しやすくすることを狙った、クォーター制の早期導入を図ります。学生の立場に立って教育課程の体系と進化を明示するコースナンバリング制の導入、学生の成長や授業理解度を可視化するプログレスファイルの実質化、学生の成長の視点からの授業評価など、アクティブラーナー育成に向けた教育制度へと転換を図っていきます。さらに、建学の精神にあるように「次代の女性リーダー育成」にふさわしい体系化されたキャリア教育を導入していきます。
 
 最後に、福岡女子大学と同窓会の関係について書いておきます。大学の進展?変化?変革には同窓会の支援が不可欠です。同窓生の親睦や交流を広げることによって、福岡女子大学のより一層の社会的知名度向上を図ることが出来ます。そして、大学?同窓会?学生が一丸となることで、福岡女子大学のさらなるの発展や地域社会への貢献が可能となります。この大学-同窓会-学生の連携を充実させることにより、福岡女子大学がどのような国際協力?貢献ができるのかが決まると考えます。これらの三者連携は、福岡女子大学の国際化や全国区化に欠かせないエンジンとります。2016年6月3日-6月5日には、福岡女子大学100周年事業の一環として、「第1回WWAS-高齢化社会における働く女性のための国際会議-」を催します。福岡女子大学の国際貢献事業であるこの会議によって、いよいよ国際化への挑戦がスタートします。これを機に、国際化の取組における課題?諸問題の検討を行いながら、さまざまな国際化事業を進めると共に、国際的貢献度を高めたいと考えています。
 2016年度は、学部と大学院との一貫教育に新しい視点を与える年になります。大学評価?学位授与機構の認証評価を受けることにより、社会的に広く認知された大学として社会貢献にチャレンジし、福岡女子大学を地方区から全国区に飛躍させる年になります。教職員?学生の皆さんは、「+α」の努力を肝に銘じ、提案を実行しながら、福岡女子大学に対する尚一層の支援をお願いします。

 2016年(平成28年)元旦
公立大学法人福岡女子大学
理事長?学長 梶山千里